2008年2月アーカイブ
症状につきましては一般向け、本人向けの記載を参照ください。
家族が統合失調症にかかった時の接し方には何点かポイントがあります。統合失調症になると、たいていの場合「何か(嫌なこと)をされる」と言うようになります。「見張られる」とか「悪口を言われる」といった被害的な意識を持つことがおおく、家族に対しても疑いを抱くことが往々にしてあります。もしご本人がご家庭でそういったありえない内容の話(妄想)をしてきた場合には、その話自体を否定するでも肯定するでもなく、今本人が抱えている困難や不安に共感するのがよいです。病院でちゃんとした治療を続ければ、自然と妄想を口にすることは減っていくでしょう。薬の飲み忘れなどがないかをきちんとチェックしていただけると治療の手助けとなります。
最近の新しいおくすりの開発や効果的な治療法の確立などにより、統合失調症の治療成績は良くなってきています。しかしときには再発したり、改善まで長い経過をたどることがあるということを頭に入れておかなければなりません。統合失調症の予後は数通りあります。おおよそ3分の1の方は元の状態に回復、3分の1の方は軽度の症状が残るものの安定します。
おくすり以外にも再発予防や治療に役立つものがあります。一つは、家族の方が病気をよく知ることです。病気の症状を知っていると、いざと言うときのご本人への対応のみならず、普段の接し方を考える上でも有益です。たとえば、統合失調症の症状の一つに、「活動性の低下」があります。退院したのに家でずっと横になっているような場合、病気の一症状として体を動かすのが億劫になっている可能性があります。この場合、無理に励ましたり、冷たくあたったりすると、ご本人は強いストレスを感じます。このようなストレスは病気を悪化させると言われています。他にも、患者が興奮している際に幻覚や妄想を論理的に否定しても効果はない、など、病気を知ることでよりよい関係を築くことができるかもしれません。
もう一つの手立てとして、社会復帰を支援する様々な施設を利用することが挙げられます。具体的には、自立生活を援助・訓練する場としての地域生活支援センターや生活訓練施設、生活の場としてのグループホームや福祉ホーム、仕事の場としての小規模作業所、授産施設や福祉工場などがあります。施設の利用以外にも、福祉制度を利用することは患者やその家族の方々の負担を軽減するのに非常に役立つでしょう。統合失調症の方やその家族が利用できる福祉制度には精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療制度、障害年金など様々な福祉制度があります。ご利用の際には市区町村福祉担当窓口や保健所などで相談してください。利用の仕方がさっぱり分からなければ、精神保健福祉士など、福祉領域の専門スタッフに相談するとわかりやすく教えてくれることでしょう。
統合失調症は、こころの病気の中でもっとも研究されているものの、いまだ謎に満ちている疾患です。医学的には「知情意」(知覚、情動、意志・思考)が広範囲にわたって障害されることで特徴づけられます。
統合失調症の症状
統合失調症の基本的な症状を簡単にまとめると、以下のようになります。
1.知覚の問題
存在しない声を聞いたり(幻聴)、他の人に見えないものが見えたり(幻視)します。
2.思考の問題
思考に関しては、考える「内容」の問題、そして、考える「過程」の問題に分かれます。まず、考える内容ですが、全く見知らぬ人に悪口を言われたりしているように感じたり(被害妄想)、監視カメラなどでずっと見られているように感じたり(注察妄想)します。次に考える過程ですが、しばしば考えがまとまらなくなってしまいます。例えば「うちの兄ちゃんが、今度車を買うって言ってるんですけど、ステレオがひどい音でやっぱりロックって嫌ですよね…」(連合弛緩)といったことから想像がつくでしょうか。
3.自我の問題
ここでいう自我の問題とは、自分と他人の区別が曖昧となった状態をいいます。このような状態では、「自分の考えが他の人に知られてしまう」(思考伝播)「他の人が考えていることがすべて分かってしまう」(考想察知)といったような症状が認められます。
4.情動の問題
不適切なときに笑ったり泣いたりすることがあります。また、感情をうまくあらわすことができず、いつ見ても同じような表情をしているようなときもあります。
しかし、個々の患者さんでこれらのすべての症状が見られるかというとそうではありません。むしろ一人一人全く違っているといってよいでしょう。ときにはストレスにかかる生活上の出来事が思考や行動の障害を促進するとも言われますが、ほとんどの場合、原因となるようなできごとは特定できません。
その他、症状を「陽性症状」と「陰性症状」に分ける方法もあります。この場合、「陽性症状」とは、「目に見える奇妙な行動」であり、幻覚であり妄想といった症状を指します。一方、「陰性症状」とは、「本来あるべき行動が認められない」ことを指します。具体的には活気が失われたり、自ら話しかけようとしなかったり、意欲が失われてしまったりといったことです。
統合失調症の発症率
統合失調症にかかる割合は約1%と言われています。これには地域差はなく、全世界で同じように報告されています。発症する時期は20代から30代と言われ、男性が若干早いとされています。
統合失調症と遺伝
統合失調症を発症する確率は統合失調症患者と血縁関係にあると高くなるという報告があります。一卵性双生児の一方が統合失調症のとき、もう一方が統合失調症だと診断される確率は50%まで高くなるという報告もあります。しかし、もし統合失調症が遺伝子の影響だけを受けるとすると、遺伝子が同じである一卵性双生児の発症率は100%になるはずです。どうして100%にならないのでしょうか?
これは、環境因子、たぶん家族や友達の支えと増え続けるストレスなどが「統合失調症になること」にかなり関係しているからと推測されています。また、細菌やウィルスが統合失調症を引き起こすのではないかと考えている研究者もいます。このようなことから、遺伝および環境がともに影響し合っているというのが現在の見方です。
統合失調症と神経伝達物質
統合失調症の症状を説明しようとする仮説は多くありますが、多くの支持を得ているのは「ドーパミン」と「グルタミン酸」仮説です。覚醒剤の一種であるアンフェタミンは、脳内のドーパミンを増やすことが知られています。覚醒剤を長期間にわたって使っている人々は、かなりの頻度で統合失調症に似た幻聴や妄想といった症状を出すことが知られています。このことをきっかけとして、統合失調症とドーパミンの関連に関する研究が多く行われ、現在、統合失調症は過剰なドーパミンの伝達によっておきることが推測されています。
最近、ドーパミンだけでなく、別の神経伝達物質も着目されています。脳内で広く用いられている興奮性神経伝達物質のグルタミン酸をブロックする薬を内服すると幻覚が起きることが分かりました。実際、幻覚剤の一種とグルタミン酸をブロックする薬の化学構造が非常に似ていることも分かりました。これらのことから、統合失調症の患者はこの「グルタミン酸」が少ない可能性があることも分かっています。
統合失調症の薬物療法
上に述べたように統合失調症に関してはドーパミンが非常に重要な役割を果たすことが知られています。このことから、統合失調症に効果のある薬のほとんどはドーパミンをブロックする役割があります。しかし、ドーパミンをブロックしすぎると手が震えたり、体が動きにくくなったり、意欲が出なくなってしまうといった症状が多く認められます。このため、これらの症状を緩和するために、セロトニンなどのドーパミン以外の神経伝達物質の働きを調整する薬が開発されてきています。
統合失調症の経過
統合失調症の長期にわたる経過は多様ですが、最近の研究では、以前に考えられていたよりもはるかに良いことがわかってきています。一般に、幻覚・妄想などの陽性症状が強い症状の場合、経過は一般的によいと言われています。また、慢性の経過をとっている場合でも、数年あるいは数十年後に改善する可能性があるため、改善傾向を完全に否定すべきでないといわれています。また、自然治癒する方々もいると考えられています。なお、近年、未治療の期間が長いと症状が重くなりやすいと言われており、早期からの治療の大切さが指摘されています。
このようにいろいろなことが分かりつつはありますが、いまだ統合失調症の全容は解明されていません。今日も世界各国の研究者たちが様々な領域から研究に取り組んでいます。
統合失調症の特徴的な症状としては、そのようなことが実際にはないのに現実のように感じてしまう幻覚と、ほとんどの人がありえないと考えることにもかかわらず確信してしまう妄想があります。これらは陽性症状と呼ばれますが、この他に陰性症状と呼ばれる症状も多くの方にみられます。
陽性症状としては…
幻聴:声が聞こえてきたり、何かの音が聞こえてきたりします。話しかけてくるようなものもあります。
幻視:あるはずのない物が見えたりします。
思考伝播:自分の考えが周囲の人に伝わってしまっているように感じます。
思考吹入:周囲の人の考えが頭の中に入ってくるように感じます。思考伝播や思考吹入を「テレパシー」と表現する方もいます。
被害妄想:何か悪いことをされる、悪いことが起こるに違いない、という考えです。
注察妄想:絶えず見張られているような、見られているような感じです。
連合弛緩:話しのまとまりがなく、会話も成立しないことがあります。
などがあり、
陰性症状としては…
感情鈍麻:喜怒哀楽といった感情が沸き起こりにくくなる状態です。
無為、自閉:引きこもりがちとなって、特に何をするでもなく過ごしている状態です。
などがあります。
これらの症状、特に患者さんをわずらわせることの多い陽性症状に対しては、抗精神病薬といわれるおくすりでの治療が有効です。最近では、非定型(第2世代)抗精神病薬とよばれる、従来のくすりに比べて副作用の少ないものも使われるようになってきています。副作用の主なものとしては、眠気、立ちくらみ、肝障害や、呂律が回りにくくなったり、手が震えたり、などがあります。副作用が強くて内服が出来ないような場合には、主治医と相談しながらおくすりを調節してもらいましょう。また、こういったおくすりは、継続して内服していただくことが重要です。突然内服を止めたりすると、悪性症候群と呼ばれるような重篤な副作用を引き起こしやすくなりますので、おくすりの減量、調整は、必ず主治医と相談してからにしてください。
