2007年11月アーカイブ

 前の文章では「こころが健康である状態」についてお話ししました。ではこころが不健康な状態とはどのようなことをいうでしょうか。
 くよくよとしてしまって気分が晴れない、今まで楽しかったことがつまらなく感じてしまう。細かいことが気になってしまって頭から離れない。やめたいと思っていることがどうしてもやめられない。わけもなく急に不安になってしまっていてもたってもいられない。何だか世の中が不穏な感じがして安心できない。心の内を見透かされてしまってどうしたらいいかわからないなど・・。
 たくさんの人がいろいろな悩みを抱えて精神科や心療内科の門を叩きます。悩みはいろいろですが、共通しているのは、ものごとの価値や自分の行動を適切に判断する力が弱まり、社会で生きていく上でな不都合が生じている状態であり、こういう状態が長く続くようでしたら「こころが不健康な状態」と呼んでもいいでしょう。
 このような状態は、脳の病気(精神疾患)による場合もあれば、その人の性格と環境とのすれ違いから起こる場合もあります。手に負えないようなトラブルを抱えたような時には、一時的にこのような状態に陥ってしまっても何の不思議もありません。また、こころの健康というものはその人の生き方と深い関係があり、姿形や人生が人それぞれであるように幅がありものです。さらにこころの健康と不健康の間には、連続的な移行領域(グレーゾーン)があります。ですからここから健康、そうでなければ不健康と考えたり、こころの不健康=こころの病気と考えたりするように単純にはわけられないものです。
 ところで、こうした「こころの不健康」の一歩手前の状態については、どうやってそれを定義づけるか、範囲をどこまでとるか、ということが難しいため、現在では予防対策や治療を行うことはほとんどありません。悩みがあってもどうしたらいいかわからない。誰に相談したらいいのか判らない。たとえ相談ができても、相談された側もどうしたらいいかわからない。その結果悩みが重くなって、本当に「こころが不健康」になってはじめて医療機関を訪れることが普通でした。こころに悩みやストレスを抱えていて全く健康とは言い切れない、でも「不健康」と言い切ったり、今すぐ医者にかからなくちゃいけない程ではない、どうしたらいいだろう。私たちはそういった方々に何かできないかと考えてこのサイトを始めました。

 あなたのこころは、今、元気ですか? たとえもしそうでなくて自分は普通の人生が送れていない、と思ってしまっても「こころの病気」であると決めつけるのは少し待って下さい。いろいろなストレスで参っている時に、「自分は健康ではない」とか「自分はこころの病気である」と考えてご自分のことをすぐに責めるのはやめましょう。
 生きていること、それだけで私たちは次の可能性に窓を開いています。それを忘れないで下さい。
有名な精神科医で精神分析家であるフロイトは、こころが健康である状態を「愛することと働くことができること」と述べました。
 ここで「愛する」とは、単にあなたが誰かのことを想い「愛する」ことだけをいうのではなく、相手の人格を認め、意向を尊重し、お互いに何かを交換しあえるような関係にある、ということでしょう。一方的だったり、相手に甘えて頼り切る「愛」ではなく、時にはお互いに一人になる時間を作っても壊れない関係のことです。
 また「働く」ということも注意が必要です。何かの症状があるのに「症状をなくすために」働こうとする方がいます。「症状をなくすため」でなく、「症状がなくなったから」働けるようになるというのが本当でしょう。「家族を養うため」とか「自己実現のため」など「働く」理由は様々ですが、病気からの逃避とは違う、実生活に根ざした目的があることが大切です。
 フロイトと同じ時代に活躍した精神科医フランクルは、こころの健康の条件として「苦悩する自由」をあげています。つまり「普通に」悩むことができるかどうか、ということです。
 ある種の症状を抱えてしまうと、人は「普通に」悩むことができなくなります。たとえば「視線恐怖」という症状のある人は「自分は人に変な目つきをしていると思われていないだろうか」ということを悩んでしまいます。これは「学校で友人と喧嘩した、仲直りできるだろうか」とか「会社で上司に叱られた、失敗した仕事の後始末をきちんとできるだろうか」などといった、誰にでもある普通の悩みとは違います。「症状の悩み」で頭が一杯になり、「普通の悩み」がどこかにいってしまいます。
 ときどき患者さんから「こころの病気が治ったらどうなりますか?」と質問されることがあります。「こころの病気が治ったらどうなると思いますか」と逆にお尋ねすると、「何も悩まなくなる」と答える方がいます。でも「何も悩まなくなる状態」というのは、それこそ悟りを開いた聖人のような人でなければたどり着けない境地でしょう。むしろ実生活の中で普通の悩みを抱えながら、ときにまわりの人の助けを借りてそれを解決し、自分を高めていけるような生活に戻ること、それが「治った」状態といえるのではないでしょうか。

「こころが健康な状態」とは、おおまかに

 ・眠ろうと思えば眠れていること
 ・食欲があること
 ・リラックスできる時間をもてること

だと言われますが、フロイトやフランクルの言うように

 ・人を信頼し、愛せること
 ・目的をもって働けること
 ・実生活の中で悩めること

も大切な要素です。

 精生活面では先に挙げたホームヘルパーや訪問看護を利用する方法、生活訓練施設(一人暮らしの訓練をする施設)を利用する方法があります。仕事ができなく収入がなくなった場合には、加入する保険年金により傷病手当金や障害年金制度を利用する方法があります。上記の制度は精神障害の方が利用できるものの一部ですが、その方の病状や発病日などによっても利用できるもの利用できないものがあります。治療を受けながら生活をする上で困ったことがある場合には、医療機関のソーシャルワーカー、精神障害者生活支援センター、保健所、各市町村役場の精神障害担当者にまずご相談することをお薦めいたします。

(情報提供:筑波大学附属病院医療福祉支援センター)

介護の為の制度とは?

| | コメント(0)

 精神障害者ホームヘルパーの制度があります。料理買い物、掃除など家事についてのお手伝いや清潔(入浴など)についてのお手伝いをします。又65歳以上の方は介護保険制度を使い、家事及び身体介護の援助を受けることができます。

(情報提供:筑波大学附属病院医療福祉支援センター)

生活保護とはなにか?

| | コメント(0)

 諸事情より世帯所得の合計が最低生活費を下回り、資産を処分したり、使える能力を活用したり(仕事ができる場合には仕事をして収入を得る)、扶養義務者(親兄弟)に援助を求めたり、もらえる手当、年金等をもらうなど他の福祉制度を全て利用してもなお、経済的に困窮する場合の所得保障制度の一つです。適応になるかどうかは個々のケースで各自治体によっても異なりますので、地域の福祉事務所でご相談ください。

(情報提供:筑波大学附属病院医療福祉支援センター)

公共の窓口が不親切

| | コメント(0)

 各市町村役場に精神障害者福祉の担当者がおりますが、まずは病院のソーシャルワーカーや保健所へご相談の上必要な手続きをされてはいかがでしょうか。

(情報提供:筑波大学附属病院医療福祉支援センター)

 ホームヘルパーを利用し、料理や買い物、掃除などについてアドバイスを受けたり一緒にやってもらうことができます。薬の内服管理については、看護師がご自宅に訪問する(訪問看護)サービスを行っている病院では、内服管理のお手伝いをすることができます。通院している病院が訪問看護を実施していない場合、自治体によっては地域の訪問看護ステーションを利用することが可能です。こうした制度が利用できるかどうかは、通院している病院やクリニックの医師、ソーシャルワーカーにご相談ください。

(情報提供:筑波大学附属病院医療福祉支援センター)

身寄りがいない

| | コメント(0)

 身寄りがいないことによりどのようなことにお困りになっているかにより使える制度は異なります。通院している病院のソーシャルワーカーや地域生活支援センターのスタッフ、お住まいの地区の民生委員などに相談することができます。

(情報提供:筑波大学附属病院医療福祉支援センター)

受診料の支払いが負担だ

| | コメント(0)

 精神科の通院医療に対しては「障害者自立支援法」にのっとった公費負担制度があり、通院費の自己負担分の軽減ができます。通常は自己負担3割負担のところが1割負担となり、収入に応じて上限が定まっています。この「障害者自立支援法」ですが、2006年4月1日から施行された新しい法律です。この法律は従来身体障害、精神障害という風に分けられていた障害者福祉サービスを一元化し、障害者の社会復帰促進を図るというもので、社会復帰事業を積極的に推進する点では評価できますが、以前に比べて通院費自己負担を増加させたり、適応を厳密にする予定があるといった問題点があり、今後抜本的な修正が検討されていくことになっています。


(情報提供:筑波大学附属病院医療福祉支援センター)

「うつ」症状の変動

| | コメント(0)

 「うつ」になると毎日がじめっとした気分になってしまうとはいえ、晴れない雨はあるのでしょうか? 快晴になるまでにはある程度の時間が必要ですが、洗濯物を干すぐらいの晴れ間もないかというと、そうではありません。長雨の最中でもときどきお日様が雲の隙間から顔を出すことがあるように、落ち込んだ気分もずっと同じ状態で続くというわけではありません。これを気分の日内変動といいます。ストレスが原因でおこっている「うつ」では夕方から悪くなるタイプが多いようです。逆に朝から午前中にかけて悪く、夕方から夜にかけて軽快するタイプは、いわゆる「うつ病」といわれる病気に多く見られます。このタイプは一度よくなってもぶり返す(再発)ことが多かったり、いつまでもぐずぐずと治らなくて慢性化することがあるので注意しましょう。

 日内変動ではありませんが「うつ」になる周期性には他にもこのようなものがあります。
 ・ほとんど毎日のように気分がブルー。あれこれもう何年かずっと「うつ」。
 ・冬など、ある決まった時期になると「うつ」になる。
 ・1ヶ月や半年毎など、ある決まった周期ごとに「うつ」になる。
 ・女性の場合生理前になると「うつ」になる。

食欲不振

| | コメント(0)

  食べたい気持ち(食欲)は、体や心の状態によってずいぶん変わります。特に精神的には、不安や、悩み事、ゆううつ、苛々などがある時には食欲不振におちいることがあります。恋の悩みで食事がのどを通らないといった経験は誰しもあるでしょう。

 脳の中には満腹中枢と摂食中枢という場所があります。ここは胃から信号を受けて「今足りないから食事しろ」とか「今多いから食事やめろ」とか指令を出し、食事の量をコントロールする司令塔です。しかし同時にこの司令塔は脳の感情をコントロールする場所ともつながっているので、気持ちに応じて食欲の程度を変えてしまうのです。ですから、身体にしてみればお腹が空いているのに、気持ちの方は少しも食べたくない、ということはざらにあることです。
 女性の場合、無理なダイエットをすると、自然と食欲がなくなってきて、食べなくてもいい気分になることがあります。しかしこれは拒食症の兆しである場合もあり、危険で注意が必要です。
 また、ゆううつな状態が続くと食欲がなくなり、体重が落ちてしまいます。本人は自分の食べる量が以前より減っていることにも気づかず、服がダブダブになったり、体重計に乗って三キロなり四キロなり減っているのを見て初めて気づく場合があります。これはゆううつな状態が続いていることを示す体の危険信号です。またゆううつな時、人によっては、苛々してやけ喰いしたり食欲がかえって増進する場合もあります。特に体が悪くないのに食欲が普段と違ったり、体重の変化が激しいときには、こころの状態をチェックしましょう。

身体の不調

| | コメント(0)

 気分が落ち込んでくるとどんよりとして自分からゆううつな状態を実感する人もいますが、そんな気分の症状よりむしろ体の不調、たとえば頭痛、めまい、肩こり、胃部不快などの症状が主の「うつ」状態の人もいます。特に「うつ病」では90%近くの方が頭痛を併発するとも言われています。これらの症状は、本当はこころの不調で自律神経の機能が不安定になっているという信号です。からだに問題が起こっているわけではないので、内科を受診して検査をしても異常が見つからず、原因不明といわれて一層悩み、病院をハシゴしたあげく、結果的に症状が長引いてしまったり悪化することも多いようです。

 内科で薬を処方されても症状を取り除けず、以下のような特徴がある方は、「こころが疲れているのかも」と考え、こころを癒す手段を講じる必要があるかもしれません。
 ・もともと性格が几帳面、緊張しやすく神経質。
 ・朝方から午後〜夕方にかけて症状が出やすい。
 ・頭痛の部位は全体、もしくは後頭部が多い。
 ・最近不眠がち。
 ・食欲がない。

疲労感

| | コメント(0)

  人間、何かしら体を使うと疲れます。しかし、気分の沈みこみから生じる疲れというものがあるのも事実です。散歩している自分をイメージしてみてください。同じ歩くにしても誰かと楽しくおしゃべりしながら歩く場合と、独りで黙々と歩く場合では同じ距離でも疲れ方が違うでしょう。歩く距離が同じならば筋肉の運動量は同じです。しかし疲労感がそれぞれ違う理由は、頭で感じている疲労感には多分に心理的な要素が含まれているからです。
 つまり、疲労の理由には体ではなく心に理由がある可能性があるということです。
 心理的な疲労感を払拭するにはどうすればよろしいでしょうか?好きなものを食べたり好きな運動をする、あるいはほかの人に悩みを聞いてもらうなど、方法は人それぞれあるでしょう。ここで私達のおすすめする方法は、「睡眠」です。意外でしょうが、体の疲れだけではなく心理的な疲れもこれで取れることができる場合が多いのです。

不安

| | コメント(0)

  何かをする時、またはその前に不安感に襲われることは誰にでもあります。例えば試験の直前の不安、受け終わった後の「うまくできたんだろうか」といった不安は正常なことですし、有用でもあります。というのも、不安がおこるからこそ、「直前の猛勉強」や「間違えたところの復習」といった行動がおこるわけであり、これらの行動によって試験の成功や間違いの克服などの望ましい結果が期待できるからです。
 ほとんどの不安は、思い描く未来と現実が異なる可能性がある時に生じます。先の例でも「終わったテストが心配」なのは、「100点」という希望が「60 点」という現実により否定される可能性があるからです。ということは「50点でいいや」と思っていれば不安は生じずにすむはずです。
 こういった正常な不安を全て取り去ることはできませんが、未来予想図を少し変えるだけで、だいぶ楽に生活することができるでしょう。
 しかし、思い当たる理由がないのに突然強い不安が起きることがあります。動悸が激しくて口から心臓が飛び出してきそうに感じる、息が苦しくて目の前が真っ暗になる、めまいがして立っていられない、などなどの症状が何の前触れもなく出現し、このままでは死んでしまうのではという恐怖に襲われる状態を「パニック」と呼びます。パニックは前述の「正常な不安」とは質も量も異なる、いわば「病的な」不安です。幸いパニックに対しては効果のある治療法が存在していますので、こういう症状のある人は早期に医師に相談して下さい。

 脳には睡眠を司る睡眠中枢、起きている状態を保つ覚醒中枢があり、これらが相互に働き、寝たり起きたりが日々繰り返されます。しかしストレスや悩みなどで頭が休まらない状態では、二つのバランスが崩れ覚醒中枢が睡眠中枢より強く興奮し、睡眠に障害をきたすようになります

 睡眠障害には寝つくのに時間がかかるタイプ、途中何度か起きてしまうタイプ、朝早くに目が覚めてしまうタイプ、いくら寝ても寝た気がせず寝すぎてしまうタイプなどがあり、またそれらの複合型もあります。
 睡眠中枢のバランスが崩れたときにはどうしたらいいでしょう? 寝られないときに羊を数える、というのもそれほど非科学的なことではありません。柵を越していく羊を思い描いていると、だんだんリラックスしてきませんか? 睡眠中枢より覚醒中枢が強く興奮することで睡眠がとりにくくなっているわけですから、リラックスできる環境を作って覚醒中枢の興奮を抑えることで早く寝付くことができるわけです。その他暖かい飲み物を飲む、軽く体のストレッチをして緊張をほぐす、α波ミュージックを聴くなどのリラックス方法もいいでしょう。
 とはいえ睡眠障害の原因は精神的なものだけではなく、最近よく名前を聞くようになってきた、「睡眠時無呼吸症候群」などのからだの病気によることもあります。長く症状が続く時には専門家に相談してみてください。

「うつ」とは

| | コメント(0)
 「気持ちが晴れ晴れしない状態」を一般に「うつ」状態と呼びます。誰でも多かれ少なかれ経験する状態ですが、あまりひどくなって治療が必要になることもあります。そうなると「晴れ晴れしない」だけではなく、いろいろな症状が現れてきます。たとえば….


1. 気分はいつもゆううつ
「うつ」状態の気分を言葉で表すならば「ゆううつ、悲哀、寂しい、不安」でしょうか。不安のあまり、どうしようもなく焦ってしまって部屋の中をうろうろしてしまうようなことも時に経験します。

2. なんにも面白くない
「バラエティ番組を見ても全然笑えなくなった」「恋人と一緒にいてもなんにも面白くない」「あんなに好きだった音楽を聞いてもなんとも思わなくなった」というように、「うつ」状態になると、以前はあった様々な事に関する興味・関心がなくなってしまいます。

3. 意欲がなくなる
ゆううつな気分では、あまり外に出たい気持ちにもなれません。また、他の人と話すことも面倒くさくなります。このため、家に閉じこもりがちになり、口数は少なく、部屋の中で一人じっとしていることが多くなります。

4. 考えようとしても…
「うつ」状態になると人は「考えようにもなかなか考えが進まない」といいます。頭の回転がとても鈍くなったように感じ、いつも何でもなくやっていた仕事が出来なくなります(そのため「ぼけちゃったのでは」と病院に行く人もいます)。晩ご飯を何にするか、というような簡単なことも決められなくなってしまう、と言う人もいます。

5. 自分には何の価値もない
気分はずっと落ち込んで何も面白くなく、やる気も全然でない。このような状況が続いていると「自分には何の価値もない」と思いがちになってしまう方が多いようです。次第に「何の価値もないのだったらここにいても仕方がない、むしろ消えてしまって楽になりたい」と死を意識するようになります。また、なかには「価値がない」という考えがどんどんひろがって「自分の財産が全くなくなってしまった」「悪いことをしてしまった。警察に逮捕される」「自分は病気だからどっちにしても死ぬ運命だ」などと確信してしまうようになる方もいます。実際にはそうではないのですが、周囲の方がどんなに説得してもこの確信は変わりません。

6. どうしようもなく倦怠感
「心身一如」という言葉が示すように、気分が落ち込むと体も不調となってきます。まず、寝つきが悪くなります。やっと眠れたと思っても数時間で目が覚めてしまい、ベッドの中で悶々とするうちに朝が来ます。朝は気分は最悪で、食欲もでません。次第に体重は減り、頭も重い感じで肩こりもひどくなります。

 こういった「うつ」状態がいちばんはっきり表れるのが、いわゆる「うつ病」です。「うつ病」では、明らかな原因がないことがふつうです。また、原因があるように見えても、それが解決しても「うつ」状態から抜け出せなかったり、本来ならば嬉しい出来事(昇進や仕事の完結)が原因のようであったりすることがあります。このような場合、「原因」というより「きっかけ」と考えたほうがすっきりするようです。

 「うつ」状態は、「うつ病」以外でもよく見られます。代表的なのは….

1. 体の病気によるもの:甲状腺の機能が低下してしまうと、人は「うつ」的になります。その他のホルモンのバランスの乱れが、感情に影響を及ぼすことが知られています。

2. 脳の病気によるもの:脳腫瘍などで「うつ」状態となることがあります。

3. 薬の影響によるもの:体の病気の治療のために使っている薬で気分が沈みがちになることもあります。また、違法な薬も気分に大きな影響を与えます。

4. 性格が影響しているもの:悲観的・消極的に物事を見る方は「うつ」状態になりやすいようです。また、どうしても自分を好きになれなくて、いつも心の一部がすっきりしない、という方もいらっしゃるようです。

5. 悲しい経験によるもの:自分の伴侶や肉親を失ったりすることで気分が沈むことは多くの方が経験されているのではないでしょうか。

6. ほかの心の病気によるもの:様々な心の病気は気分に影響を与えます。

 このように様々なことから「うつ」状態がひきおこされるのですが、いずれにせよ「うつ」状態になると、気持ち、そして体が不調となってくるために仕事や学業などに支障を来すようになります。この「うつ」状態とは何なのか、どのようにすればこの「うつ」状態を脱出することができるのかということについて、たくさんの人が研究し、いろいろなことが次第に分かってきました。興味のある方は以下のコラムを読んでみてください。

強迫とは

| | コメント(0)

 恐怖と関連のある言葉として「強迫」があります(同じ音である「脅迫」とは全く関係がありません)。強迫とはちょっと乱暴ではありますが簡単に言ってしまえば「わかっちゃいるけどやめられない」考えや行動のことです。自分で考えようと思っているわけではないのに頭に浮かんできてしまう考えを「強迫観念 obsession」、やりたいわけではないのにやらないではいられない行動を「強迫行為 compulsion」と呼びます。
 「いろいろな恐怖」の項にも出てきたクモ恐怖などは、毒グモではなくなんでもない小さなクモが恐くてしかたない、というものです。自分では怖がる必要がないと「わかっちゃいるけど」恐くてしかたないのがほとんどです。不潔恐怖も自分では汚くないと「わかっちゃいるけど」汚いのが恐い、という人もたくさんいます。このような恐怖は強迫観念と同等のものと考えることができます。
 出かけた後でガスの元栓を閉めたかどうか気になってしまう、鍵をきちんとかけたかどうか不安でしかたない、といことを体験したことがある人は少なくないでしょう。特にこれから長い旅行に出かけるという時などは特にそうでしょう。しかし普段の生活の中で、明らかに鍵を掛けたのが「わかっちゃいる」にも関わらず、その場を離れると鍵が心配になってしまって確認に戻ってしまっていつになっても出発できない、という人がいます。こういう確認しなくてはいられない状態を確認強迫といいます。また、不潔恐怖を持つ人が手やからだを洗い続けている状態を洗浄強迫と呼びます。確認強迫や洗浄強迫は強迫行為のなだでも代表的なものです。
 強迫観念と強迫行為を主な症状とする病気を強迫神経症とか強迫性障害 obssedive-compulsive disorder, OCD と呼んでいます。

社会恐怖

| | コメント(0)

  人前に立ったり、人から注目される状態で緊張感、不安感が募ったという思い出は誰にでもあると思います。しかし人によっては「不安感が強すぎてその場でうまく振舞えない」「あんな不安感に襲われるくらいならもう人前に立ちたくない」と考えねばならぬほど不安感が強かったり、不安感を覚える状況が世間にありふれてしまっているようなケースがあります。こういった人と人との関わり合いの場面に対して強い恐れをいだいてしまう状態を広く「社会恐怖 social phobia」と呼びます(社交恐怖、と呼ぶこともあります)。人前に出ることが恐い、話をして周りの人をしらけさせるのが恐い、他人の視線が恐い、自分の視線や表情・態度が他人に嫌な思いをさせてしまうのが恐い、他人と一緒に食事をするのが恐い、人前に出てからだが硬くなったり、顔が赤くなったりするのが恐い、など恐怖の中身はいろいろありますが、いずれにせよ結果として人とつき合うことが苦痛となって引きこもってしまったりするきっかとなったりします。
 日本では古くから「対人恐怖症」という概念が知られており****。この対人恐怖症は日本の文化との関連が強いと言われており、アメリカの精神科の教科書などでは、taijinkyofusyo とローマ字書きの病名が載せられているほどです。

いろいろな恐怖

| | コメント(0)

 不安と違って対象がはっきりとした「恐れの気持ち」を、精神科では「恐怖 phoobia」と呼びます。恐怖を病気としてとらえた場合は「恐怖症」とも呼びます。
 恐怖は対象別にそれぞれ名前が付けられ、たくさんの種類が知られています。詳しく調べた人によれば、百種類以上のの「○○恐怖」があるとのことです。前にもあげましたが虫のクモが恐い「クモ恐怖 arachnophobia」、とがったものが恐い「尖端恐怖 aichmophobia」、汚れやバイ菌が(ついてしまうのが)恐い「不潔恐怖 misophobia」「細菌恐怖 bacillophobia」など何となく理由が判るようなものもあれば、虫ではなく空にある雲が恐い「雲恐怖 nephohpobia」やある特定の数字を見たり聞いたりすることを恐れる「数字恐怖 arithmophobia」など怖さがどこから来るのか理解しにくいものもあります。なかには、「『ピーナッツバターが口の裏側につくことに対する』恐怖 arachibutyrophobia」などという冗談のようなもの(恐らく冗談なのでしょうが、大きな英語の辞書にはきちんと掲載されています)や、「ニンニク恐怖 alliumphobia」といったドラキュラのためのような恐怖症もあります。
 モノや事柄に対する恐怖ではなく、「ある特定の状況」に対する恐怖も存在しています。「閉所恐怖 claustrophobia」「高所恐怖 acrophobia」などはよく知られていますし、「広場恐怖 agiraophobia」「社会恐怖 social phobia」などは恐怖症の一つというよりそれぞれが病気としてひとつの単位となっています。

 はじめてパニック発作を体験した人は、その激烈な症状に死を予感するといいます。救急車を呼んで病院に駆け込む人もたくさんいます。しかし実際に病院に着いた頃には症状は収まっていることが大半です。また症状が残っていても、検査でそれほど異常が出ることはありません。なにしろ非常ベル自体はからだにもともと備わっている生理的なものですから、検査に引っかからないのが当たり前です。つまり当人がものすごく苦しんでいるのにも関わらず、周りからはそんなに深刻には見えないのです。
 原因がわからないまま、でもまた発作が起こるのではないかという不安をかかえたまま放置しておく、ということがこれまで多く行われてきました。周りからは「気のせい」「大げさすぎる」などと言われ、自分でも「こころが弱いからだ」などと反省してあれこれ原因を考えようとします。その結果パニックの再発を招き、病状の悪化を起こしてしまいます。
 しかしもともとは「原因不明の非常ベルの誤作動」なのです。誤作動の原因は分かりませんが、誤作動を起こしにくくする(発作を予防する)薬や、ベルの音を小さくする(発作の症状を軽くする)薬が開発され、治療に有効なのがはっきりしています。これらの薬を上手に使うとパニック障害はきれいによくなっていきます。何より大切なのは、パニック発作の他のいろいろな症状が現れて強くなる前に適切な治療を開始することです。

 パニック発作を体験したあと多くの人は何が原因だったかを探ろうとします。本当は原因が特にないことが大半なのですが、発作があったときしていたことが原因であると思いこんでしまい、それを避けようとするようになります。たとえば人がたくさんいるところでパニック発作を起こした人は、発作との間に関係がなくても人混みに入ることが恐くなってしまいます。
 また、発作があったときとは関係なくても、車や電車、エレベーター、橋の上などを避けるようになるという人もいます。これは知らず知らずのうちに「次に発作が起こった時に孤立して助けてもらえなかったらどうしよう」という気持ちが働き、そういう状況を恐れてしまうからだといわれています。その証拠に「自分で運転していると平気だけれど、バスは嫌」とか「一般道は平気だが高速道路はだめ」という人がいます。つまり自分の運転や一般道ならば、発作を起こしても自分で車を止めて助けを呼べるけれど、バスや高速道路ではそうはいかないから恐怖を感じてしまうのです。このような「どうにもならなく孤立してしまう状況」に対する恐怖を「広場恐怖」といいます。パニック障害の多くにこの広場恐怖が伴います。
 パニック発作を恐れる気持ちが強くなると、実際に発作が起こりやすくなります。発作が繰り返されると次第に不安がいつもあるようになり、その状態がさらに発作を起こしやするという悪循環に陥ります。パニックを恐れる気持ちののことを「予期不安」といい、不安がいつもあるようになった状態を「不安の全般化」といいます。
 これらの症状が強くなると生活は次第に制限され、楽しみがどんどん失われていきます。苦しみが続いてうつ状態になってしまうこともあります。実際パニック障害にうつ病が伴うことは決して稀ではありません。

病的な不安とは

| | コメント(0)

 不安そのものは危険を知らせる生理的な非常ベルのようなもので、それ自体は病気ではありません。
 でももし何も危険が無いのにも関わらず、非常ベルが鳴ってしまったらどうでしょうか。何の心当たりもないのに、急に怖くなり、心臓がどきどきし、息が苦しくなる。ひどいときにはもうこのまま死んでしまうのではないかと感じてしまう。このような非常に苦しいからだの症状を伴う不安が、突然現れる状態を「パニック発作」と呼びます。
 パニックは、ギリシャ神話に出てくる牧羊の神様「パン」が語源です。急に何かに取り付かれたように羊の群が暴れ出す様子を見た羊飼いが、昼寝の邪魔をされて怒ったパンのしわざと考え、パニックということばになったといいます。
 パニック発作が何故起こるのかはまだはっきり判りませんが、どうやら人間に備え付けられている非常ベルが誤作動を起こしているのは間違いなさそうです。つまり、本来は十分に酸素が足りているのにも関わらず、どういうわけかからだが「酸素が足りない」と誤解してしまい、非常ベルを鳴らしてしまうわけです。それはちょうど溺れて空気が吸えないのと同じです。事実 パニック発作を体験した人は、「吸っても吸っても息が入ってこない」「今にも死んでしまいそうな感じ」だったと言います。つまり態にもどるのですが、「苦しくて死にそうだった」という強烈な体験は、決して忘れられません。そしてまたパニック発作になるのではないかと、多くの人が心配になります。やっかいなことに心配が続くと、パニック発作がまた起きやすくなります。つまり一回誤作動を起こした非常ベルは、誤作動を起こしやすくなってしまうわけです。こうしてパニック発作を繰り返すようになった状態をパニック障害といいます。
 パニック障害はきちんとした治療が必要な病的な不安の代表です。以前はあまり病気と認識されていませんでしたが、幸い最近は多くの人に知られるようになり、早く治療が行われるようになりつつあります。
パニック発作とは、「水が無いにも関わらず溺れている」状態といえます。
 もちろん実際には水はありませんから、死んでしまうことはないし、自然にもとの状態にもどるのですが、「苦しくて死にそうだった」という強烈な体験は、決して忘れられません。そしてまたパニック発作になるのではないかと、多くの人が心配になります。やっかいなことに心配が続くと、パニック発作がまた起きやすくなります。つまり一回誤作動を起こした非常ベルは、誤作動を起こしやすくなってしまうわけです。こうしてパニック発作を繰り返すようになった状態をパニック障害といいます。
 パニック障害はきちんとした治療が必要な病的な不安の代表です。以前はあまり病気と認識されていませんでしたが、幸い最近は多くの人に知られるようになり、早く治療が行われるようになりつつあります。

  「不安」も「恐怖」も日常の会話で使われる、意味をあらためて考えるまでもないことばです。でも精神科で医学用語として使うときには、定義を厳密にしなければならないことがあります。精神科で使う「不安」と「恐怖」について少しみてみましょう。
 対象がそれほどはっきりしない漠然とした恐れの感情のことを「不安」と呼びます。何が恐ろしいのか判らないけれど、何だか怖い、胸騒ぎがする、落ち着いていられないという状態です。不安には自律神経症状といって、心臓がどきどきしたり、口が渇くなどのからだの症状も伴います。
 不安は誰でも体験したことがあるごくふつうの精神状態です。暗い夜道や試験、病気や死など「そこから逃げ出したくなる」ことやものを目の前にすると不安がおきます。いってみれば「不安」は危険を感じたときに「そこから逃げ出せ」という非常ベルのようなものです。このベルは誰のからだにも自然に備わっているふつうの仕組みです(こういう仕組みを「生理的」といいます)。
 「不安だから暗い夜道を通らないで回り道する」「不安だから試験勉強を一生懸命する」「早めに病院に行く」などの行動をうながします。その結果強盗に遭う危険や、試験に落ちる危険、病気担ってしまう危険を避けることができることができるというわけです(それでも試験に落ちてしまうことはありますが)。
 一方同じ恐れの感情でも、「不安」よりも対象がはっきりしているものを「恐怖」と呼びます。恐れの対象は特定のものやことがら、状況などさまざまで、たくさんの種類があり、対象に「恐怖」ということばをつけて表します。英語ではフォビア(phobia)という語尾がつきます。たとえば、虫のクモが恐くて仕方ないときには「クモ恐怖」、arachnophobia(arachnno=ギリシャ語でクモ)と呼びます。幕末に活躍した坂本龍馬がクモ恐怖だったそうです(このサイトを運営しているサードライフのスタッフにもクモ恐怖の人がいます)。
 「恐怖」はもっともな理由がある場合と、そうでない場合がありますが、いずれにせよそのせいで困ったことが起きなければ何も問題はありません。しかし、恐怖が強くて生活に支障を来すような場合は治療の対象になることがあります。

過眠

| | コメント(0)
 最近、大学病院の外来に「朝起きられない」「日中授業中に寝込んでしまう」といった、過眠の訴えの中高生が紹介されてくることが多くなりました。一昔前までは、このような人たちは「根性がない」「怠けている」と一括りにされて、決して精神科の外来に来るようなことはありませんでした。ところが、最近は一般の方々の眠りに関する知識が増えて、特殊な睡眠障害を疑って受診される(あるいはさせられる)方が増えてきています。しかし、実際診察してみると、彼らの大半はそういった特殊な病気ではなく、寝不足や退却心性に基づく過眠である場合が多いのです。今回は、特殊な過眠症とそうでないものとの簡単な区別の仕方をお話したいと思います。


1.「朝起きられない」人たち
 このような人たちの多くは、夜更かし型の人です。夜更かしの理由も様々で、「勉強やアルバイトが忙しくて寝付く時刻がどうしても遅くなってしまう」という人もいれば、「早く寝たいのになかなか眠気が来ない。その結果寝付くのが遅くなり、眠くて朝起きられない」という人もいます。前者は、生活習慣の改善や軽い入眠剤の短期間服用で治ってしまう場合が殆どです。後者の場合、「睡眠相後退症候群」が疑われますが、一週間の生活パターンを注意して見てみると、学校のある平日の朝はどんなに起こしても起きない人が、土日の休みになると、早起きしていそいそと外出するという人もいます。さらに、起きた後でいいから学校に行ってごらんと勧めると、ますます起床時刻が遅れていくといった特徴が見られます。このような人たちの睡眠パターンは「動機のある睡眠相後退」と呼ばれ、アパシーなどの神経症性の不登校学生によく見られる睡眠パターンです。

2.「授業中寝込んでしまう」人たち
 この訴えも多く、特に学校の先生から受診を勧められるケースが殆どです。ナルコレプシーという病的な過眠症では、十分な睡眠時間をとっていても、日中に場所・場面を選ばず突発的に寝込んでしまうのが特徴の一つです。そのため、思わぬ事故を引き起こす場合がしばしばあります。しかし、「寝込んでしまう」受診者の多くは、事故の既往が無く、また関心の無い場面ほどよく寝てしまいます。人の適切な睡眠時間には個人差があります。「人並みな」睡眠時間が、実はこの人たちにとっては短いことが多く、昼寝を少しするだけで多くの場合症状は改善します。

うつ病 ケース紹介

| | コメント(0)
Tさんはなんでもまじめにやらなければ気がすまない性格で、学生時代は勉強、部活動ともに全力投球でした。まわりからは、「そこまでやらなくてもいいんじゃない」と言われることもあったといいます。大学卒業後は研究所の職員となりました。

 仕事熱心な人柄が評価され、多くの研究を任されるようになり、自分のやりたい研究を思う存分にやっていたあるとき、Tさんは上司に呼び出されました。「君のそのまじめなところは皆に見習ってもらいたい。ぜひ、研究だけではなく、部下を育ててくれないか」この一言で、Tさんはそれまでの研究職から一転して管理職になったのです。

 まじめな性格から、管理職となってから、Tさんは自分の部下の面倒を一生懸命見ていました。争い事を好まない性格もあり、自分の部署がいつも穏やかでいられるように心をくだきますが、皆がいつもそう穏やかでいられるわけではありません。部下のなかには問題を起こす人がいました。いつもその部下のことで、上司にいやみを言われ、他の同僚たちにも「なんとかしてくださいよ」とつつかれ、Tさんは「部下がうまく育たないのは自分のせいだ」と自分を責めるようになりました。

 そんなことが半年ほど続いた頃、朝、体がだるいことに気がつきました。今まではスッキリした気分で起きられていたのに鉛のように体が重いのです。家を出る時間になっても、「今日が休みだったらいいのに」と毎日思うようになっていました。体がだるいのに、夜になると妙に目が覚めてしまい、寝付こうとしても寝付けません。翌日にはさらに体がだるくなり、食欲も少しずつ細くなっていく、そんな日々が続きました。

 そんなTさんを心配しながら見守っていた奥さんが「大丈夫なの?休んだ方がいいんじゃないの?」とたずねると、「俺は管理職には向いていない。研究だけやっていればよかった。この世からいなくなりたい」とボソッとつぶやきました。それを聞いて、あわてた奥さんは「あなた、病院に行って相談しましょうよ」といい、Tさんは精神科を受診しました。

うつ病に関しての全般的な説明は、ご本人向け、一般向けのコラムをご参照ください。

 

ご家族にわかっていただきたいことは、

本人は、けっしてなまけているわけではないということです。

うつ病という病気のせいで、やろうとしても、できない状態なのです。

本人が一番はがゆく思っていて、無理をして仕事、家事などを今までのようにこなそうとしますが、うつ病の場合、集中力、判断力が低下しているので、うまくいきません。

 

治療としてはなにより休養が大事です。

ストレス要因からはなれて、食事、睡眠をとることが必要です。

 

まず、本人が休めるように配慮していただいて、

仕事や家事などは、けっして無理をさせないでください。

仕事をやめるなど、人生における大事な決断は先延ばしにしたほうが良いでしょう。

主治医とよく相談をしながら、とにかくあせらず養生するよう、本人を支えてください。

 

お薬は、睡眠がしっかりとれるように、睡眠導入剤、抗うつ薬などが処方されます。

一部の薬では、吐気、便秘などの副作用がでることもあるので、本人にあう薬を医師、薬剤師と相談しながら、一緒に選んでいきましょう。

 

うつが良くなり始めたとき、また薬の飲みはじめに死にたくなるきもちが強くなることがあります。

ご家族は特に薬の飲み始めは注意して本人の様子をみていてください。

 

病院を受診するときには、付き添いをお願いしたいと思います。

外来で、本人のご家庭での様子を伝えていただくと、より適正な治療が行えます。

 

うつ病とは、

  •   気分が落ち込む、冴えない
  •   やる気が出ない
  •   食欲がでない
  •   夜眠れない
  •   集中力がない
  •   イライラしたり、不安になって落ち着かなかったり

などの症状が続く病気です。この病気になると、自分には全く価値が無いように感じたり、必要以上に自分を責めたり、また時には“自分なんていなくなってしまったほうがいいんじゃないか”といった考えにとらわれることがあります。人によって現れてくる症状は様々ですが、多くはここに挙げたような症状がみられます。

 うつ病になるきっかけとしては、一概にコレと言い切るのは難しく、昇進で仕事の責任が重くなった、引っ越して慣れない土地に移り住んだ、治療中の病気がなかなか良くならないなど、いろいろです。他の人にとっては些細なことでも、当人にとっては大きな出来事と感じることもあります。

 一般的に、7人に1人は生涯に一度はうつ病を経験すると言われています。うつ病ではきちんと休養をとっていただくことが何より肝心です。無理をしてはいけません。そして、うつ病は治療により良くなりますので、あせらず、じっくりと治療をすることが大事です。


  • うつ病の歴史
    「うつ病」という病気は古くから知られていました。もちろん当時は他の心の病気との境界もあいまいでしたが、最も古い、現在も残っている記載としては旧約聖書で、およそ紀元前10世紀ごろ、イスラエルの王であったサウルがダヴィデを殺そうとしたエピソードと言われています。医学者による記述は紀元前5世紀ごろ、「医学の父」と呼ばれるヒポクラテスによって書かれました。ヒポクラテスは人間は血液、粘液、黒胆汁、黄胆汁からできているという古代ギリシアで主流であった「四体液説」に基づき、血液が多い人は楽天的、粘液が多い人は鈍重、黒胆汁が多い人は憂うつ、黄胆汁が多い人は気むずかしい性質を持つとしました。この黒胆汁(メランコリア、melancholia)が現在の憂うつ(メランコリー)の語源となっています。その後うつ病を含めた心の病気は近代ヨーロッパを中心に研究、分類が進められ、現在に至っています。

 

  • うつ病の原因
    過度のストレス、疲労が最も多いきっかけといって良いでしょう。しかしそれらが具体的に体、特に精神を司る脳にどう影響を及ぼすのかはわかっていません。様々な脳の神経伝達物質(ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなど)に関しての仮説があり、現在のうつ病の治療薬(抗うつ薬)はそうした神経伝達物質に働いて効果をあらわすとされています。

 

  • うつ病の症状
    悲しく、沈んだ気持ちになる「抑うつ気分」と何もやる気が起こらない、といった「意欲の低下」が2大症状と言えるでしょう。それに伴い仕事の能率が落ちたり、本来なら楽しいはずの自分の趣味や好きなテレビ番組も楽しめなくなったりしてしまいます。悲嘆にくれ、死にたいと思ってしまうこともまれではありません。そういった状態が数日ではなく数週間続くようなら「うつ病」と診断できます。気分の障害だけではなく、食欲低下、不眠、頭痛、めまいなどといった身体の症状がそのサインであったりもします。

 

  • うつ病の程度
    どんな病気、怪我でも程度があるように、うつ病に関しても軽症なものから重症なものまであります。例えば私達が愛する人や家族を失ってしまった時、悲しい気持ちや憂うつな気分になります。しかしそれは正常な反応であり、しばらくすれば復活できるでしょう。しかし何週間もそれが続き、仕事ができない、学校に行けないなど生活するのに大きな支障を来たしてしまうような時、治療が必要な状態といえます。中にはほとんど1日中寝たきりになってしまう人、死にたい気持ちが強い人や実際に自殺未遂をしてしまった人などは重症と言え、入院治療の対象となります。一方、「躁うつ病」は気分が高揚してしまう「躁」の状態とうつの状態を繰り返す病気のことを指します。その他、「妄想性うつ病」と言われているものもあり、不安感や焦りが強くなり、過去の些細な過失を悔やみ、すべてを自分の責任と思い、経済的に破綻し家族が路頭に迷ってしまう、といったことを妄想と言えるほど固く信じ、考えてしまう人もいます。これらの人はむしろ活動的になっていることがあり、一般的なうつ病のイメージからは遠いのですがこれもうつ病の1つで、自殺の危険が高く重症といえ、速やかな入院治療が望まれます(前述した旧約聖書のサウル王はこのタイプだったかもしれません)。

 

  • うつ病の治療
     治療としては主に抗うつ薬が用いられます。最近では副作用も少なく、効果は従来の薬と同じか高いといわれているSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)をまず用いることが主流となっています。その他症状にあわせて抗不安薬、睡眠薬を用いることもあります。

薬でなかなか良くならない人、治療に緊急を要する人、副作用が出てしまい抗うつ薬が使えない人には電気けいれん療法(ECT)が行われることもあります。

 

 

このように一言でうつ病といっても様々に分けられ、決して珍しい病気ではなく、現在100人いれば1人~5人はうつ病の患者さんだといわれています。これはれっきとした「病気」であり、治療が可能です。決して怠け者、精神が弱い人がなるのではなく、むしろ真面目で能力があり、責任感の強い人に多い病気なのです。

 

  • 参考文献

What was the Mental Disease that Afflicted King Saul? Ben-Noun Clinical Case Studies.2003; 2: 270-282

 

 

このアーカイブについて

このページには、2007年11月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

次のアーカイブは2008年2月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.01